記述が古い箇所がございます。本記事は、2013年に書かれたレビューを転載したものです。時間がとれ次第、最新の情報を反映しようと考えておりますが、現時点では追いついていません。予め、ご了承ください。
REFERENCE XLは、アメリカのTransparent Audio社の製造・販売するインターコネクトケーブルである。また、OPUSシリーズの登場以前はフラッグシップであったシリーズでもあり、現在もTRANSPARENTの100万円クラス(※1)として、50万円クラスのREFERENCEと共に同社ラインナップの中核をなすシリーズでもある。国内では、Purist Audio Design(PAD)のDominusやMITのORACLEシリーズなどと共に、90年代からハイエンドケーブルの代名詞的存在として君臨してきたシリーズで、数度のマイナーチェンジを経つつ、100万円クラスの競争が激烈となっている現在においても同クラスの中核として生き残っている実力機である。最近では、Sakra(STEALTH)、Gryphon(Stage III Concepts)、そしてSeraphim(ZenSati)など、100万円クラスでもこのREFERENCE XLと同等か、あるいはそれ以上の存在が現れつつあると感じるが、軽く10年以上にわたって同クラスをリードしてきた功績は偉大である。
尚、今回レビューするのはSS(ソリッドステート用、※2)の方。
※1 100万円クラスとは、1m・XLR仕様の国内定価が100万円前後のケーブル群を指す造語。PRIME XLR(Jorma Design)、Indra(STEALTH)、Reference XL(TRANSPARENT)などをはじめ、蒼々たるケーブルがひしめき合う激戦区であるため、1つのジャンルとして区分している。
※2 TRANSPARENTのケーブルには、ソリッドステート用のSSと真空管用のVが存在する。
やや細身の線体と、その中央付近に備え付けられた重量級のネットワークが特徴的なラインケーブル。この構造はTRANSPARENTのラインケーブルに共通するものであるが、REFERENCE XLクラスになると、線体とネットワークを合わせるとそれなりの重量感がある。主観だが、ネットワーク自体は独特な外見ではあるものの、全体的には非常に機能的で無駄な脚色のないデザインで、原音忠実に定評のあるTRANSPARENTらしいデザインだと言えよう。
取り回しは、曲げについては苦労する可能性は皆無であるが、いかんせんネットワーク部が重いのと、ねじるのに案外苦労することから、プラグ部や機器側への過負荷については少々気を使う。バランスの場合、ネットワークがダブルであるため、尚更だ。
上述したように非常に息の長いシリーズであり、スーパーハイエンドケーブルのパイオニア的存在と言っても過言ではないケーブル。サウンドは、そのことを裏付けるかのように脚色が少なく汎用性に優れたものであり、かつハイエンドの必須要素である高S/N比や情報のコントロール力(ここでは敢えて音の分離も含む)に関して極めて優れている。逆に、昨今のケーブルが好んで誇示したがる情報量(聴感解像度や一聴しての音の数)については、そこまで力を入れていない。また、これは上位機種との差別化を図るためであろうか、レンジと帯域バランスについては「フラッグシップではないこと」特有の詰めの甘さを感じる(※)。上は綺麗に抜けてゆくのだが、下の落ち方が若干甘く、スピード感・リズム感もやや鈍い。高域のキレ味は十分なだけに、勿体ないところである。逆に、厚みは十分にあり、中低域~低域付近が膨らむピラミッド型の帯域バランスだと言えるだろう。この点は、本来であればハイエンドにあるまじき欠点なのだが、REFERENCE XLが一筋縄ではゆかない点は、この帯域バランスがクラシック音楽の再生において抜群の威力を発揮する点である。上で述べたような長所もあいまって、楽器数が増えれば増えるほど安定感と統率力を発揮し、フルオーケストラの再生においては同価格帯でも最高クラスのパフォーマンスを発揮する。総じて、聴感S/Nと情報をコントロールする力に優れる点、音色面での脚色が少ない点、クラシック音楽との相性が抜群である点、等々、短期的な流行り廃りに左右されない実力と方向性を備えたケーブルであり、おそらく10年後・20年後にもその地位は確かなものだろう。
※SiltechのSnow Lakeなどについても、この点は感じる。
それぞれの評価項目の定義についてはこちらを参照。
この点については、既に詳しく述べたので、ここでは強調するに留める。
REFERENCE XLは、の紡ぎ出す音像は冷静かつ整然と描写され、熱気やパッションといった要素は控えめ。潜在的なエネルギー感・パワー感は秘めるが、無闇にそれを顕在化させることはしない、大人しいタイプのケーブルである。
サウンドステージは特に左右・上下への広がりがある。前後(奥行き)については、Gryphon(Stage III Concepts)やSeraphim(ZenSati)など、REFERENCE XLよりも広がるケーブルはあるだろう。より恐るべきは音場の透明感であり、抜群の聴感S/Nと、無駄な粒子っぽさが僅少な出音も相まって、ステージの見晴らしはかなり良い。Gryphonなどと同様、情報量は増やせばよいわけではない、という点を強烈に意識させるケーブルである。音像は、単純な聴感解像度や実体感についてはORIGO XLR(Jorma Design)などに劣る気がしたが、実際に聴いてみるとさほどの劣位は感じない。情報量を増やすのではなく、うまく描写することによって聴者を納得させるタイプ。
音色面についてもう少し補足すると、同様にピュアコッパーのORIGO XLRと比べると、ややシックかつダークな音調が特徴的である。誤解を恐れずに言うなれば、PRIME XLR(Jorma Design)やSeraphimなどに比べて鮮烈さと色彩感に乏しい印象を受ける。これが旗艦のOPUSになると、必要に応じてパッションと躍動感が強まり、ほぼ全ジャンルに対応可能な汎用性を得ることから、それこそがTRANSPARENTの理想とするところなのであろう。ただ、100万円クラスのREFERENCE XLにあっては、それらの点は犠牲にされているようだ。
上で、REFERENCE XLの帯域バランスについて触れたが、REFERENCE XLが得意とする周波数レンジは、クラシックにおける必要十分とほぼ合致する(オルガンやピアノ等の楽曲の一部は除く)。低音の下の方の分解能で劣ることは、特に昨今のソースたとえばEDMなどを再生する際には足かせとなるが、クラシックの再生時にはさほど問題にならない範疇にある。また、帯域バランスから言えばブーミーとすら言いうる低域も、クラシック再生時には抜群の安定感・重厚感をもたらしてくれる。総じて、性能面でネガティヴな要素として取り上げた要素も、クラシック再生時にはさほど問題にならない、というのが率直な感想である。
尚、REFERENCE XLと同様に、脚色の少なさで知られるSeraphimと比べると、ステージの広がりと音楽的な明るさ・ストレスの小ささはSeraphimが勝るが、音像描写の克明さと音の透明度ではREFERENCE XLが勝り、特にクラシック再生における音色的な汎用性ではREFERENCE XLに軍配が上がると考えている。反対に、ジャズ全般を再生する場合は、Seraphimを用いた方が空気感は出るだろう。
ポジションは選ばない。あるとすれば好みの問題だと思うので、実際にシステムに組み込んでみた上で判断するのが迅速かつ確実だと思われる。
OPUS(TRANSPARENT)
VALHALLA(NORDOST)
PRIME XLR(Jorma Design)
ORIGO XLR(Jorma Design)
Gryphon(Stage III Concepts)
Seraphim(ZenSati)
他