記述が古い箇所がございます。本記事は、2013年に書かれたレビューを転載したものです。時間がとれ次第、最新の情報を反映しようと考えておりますが、現時点では追いついていません。予め、ご了承ください。
PowerLink MM2X(PLMM2X)は、アメリカ合衆国のTransparent Audio社の販売する電源ケーブルであり、同社の元フラッグシップモデルである。PRIME POWER(Jorma Design)やORACLEシリーズ(MIT)などと同様に、専用の回路およびボックスを搭載した個性的な外見が特徴であり、またその極めて強力なノイズ対策力でも有名である。尚、本モデルはPowerlink MMシリーズの3代目にあたり、初代や2代目と比べて、ボックスの周辺部などが改善されているようだ。
高い基本性能を備える反面、国内定価は良心的に設定されており、絶対的な能力のみならずコストパフォーマンスの面でも魅力的なケーブルである。
上述したように、ケーブル中央部に装着されたボックスが非常に印象的な外見のケーブルである(おそらく、この箱がなければよくある電源ケーブルだろう)。何が入っているのかは公開されていないが、このボックスに搭載された何らかの装置が優れたS/Nと関係しているのであろうという噂は根強い。
線体は、この手のシールドが施されたケーブルとしては太くて硬い部類に入ると感じられ、質実剛健な印象が強い。ただ、その点が取り回し時に問題となることは殆ど無く、むしろ問題となるのは上述したボックスの方である。このボックスは例えばPRIME POWER(Jorma Design)などのそれと比べて重く、きちんと置ける場所を確保しなければ機器側のインレット周辺にかなりの負荷がかかるので、購入時はそのあたりは熟考されるべきだろう。
PLMM2Xにおいて、特に素晴らしいのは聴感S/N、音の分離、情報コントロール力の3点。この3点がこれほど高いレベルで揃ったケーブルは稀で、大音量でのフルオーケストラも悠々と統率・再現し、かつ小音量再生した場合も音はクリアーで細部の描画はことごとく丁寧という優秀さだ。しかも、システムに1本入れるだけで、かなり効果がある点も特筆に値する。この強みに比べれば、下で述べている低音の問題などは、どうとでもリカバリが可能なものである。
次いで、広大なサウンドステージに音像を散りばめる、その情報の量感も見事だが、これについてはこのケーブルと同等か、それ以上の力量のケーブルはある模様だ。例えば、Dream(STELATH)やODIN(NORDOST)など。
一方、これは主に低音の話で、量感については申し分ない反面、質については課題が残る。具体的には、低音の下の方の表現が、少々大雑把である。ちなみに、量感についても少々厳しいことを言うなれば、浅めの低域を膨らますタイプである点は気になる。膨らますだけならば良いが、膨らませた音はきちんと立ち下げなければ、スピード&リズムに悪影響が出るためだ。このあたりの弊害は、たとえばPRIME POWER(Jorma Design)やDEVICE 0(K. Racing Design)には認められない。もっとも、低音を膨らますアプローチは、音源によっては相性がよかったりするので、必ずしも捨てたものでもなかったりする。
それぞれの評価項目の定義についてはこちらを参照。
これについては既に説明したため、ここでは強調するのみに留める。
PLMM2Xは、音色面の癖のなさについて、卓越している。その音色は恐ろしいほどニュートラルで色付け(ノイズによる濁りを含む)が少なく、おそらく業界でも屈指の使いやすさである。特に、クラシックや古いジャズなど、アコースティックの音色を再現する力が問われる音源を相手にすると、その強さが際立つ。雰囲気の問題として多少のダークさは感じるが、偽物っぽい色付けは感じられない。また、同じように高い汎用性を備えるアレグロ電源ケーブルと比べると、PLMM2Xは出音が静的な分だけ温度感は低く、S/Nも相まって陰影が豊か(対する、アレグロは動的な出音で、温度感も高い)。余談だが、かつて筆者は、このPLMM2Xとアレグロを、音色面のリファレンスとして位置づけ、たびたび比較レビューなどで使用していた。
PLMM2Xの描写する音像は、緻密なポジショニングを特徴としている。あたかも、それぞれの音像が予め、サウンドステージにおける自らのポジションを正確に把握しているかのように、ブレなく屹立する。
もう一言褒めるなら、PLMM2Xは、余計な演出を殆どすることなく、精緻な音像の定位を実現する。どう言うことかというと、例えば、同じように音像の定位に優れるVALHALLA(NORDOST)やPRIME POWER(Jorma Design)の場合、タイトでキリリとした像の実在感や音線の明瞭さによって、音像定位の「ビシッとした感じ」をアピールするところがある。が、PLMM2Xの場合、このような演出が控えめだ。
ポジションは選ばない。あるとすれば好みの問題だと思うので、実際にシステムに組み込んでみた上で判断するのが迅速かつ確実だと思われる。
VALHALLA(NORDOST)
PRIME POWER(Jorma Design)
アレグロ電源ケーブル
King Cobra CX(Shunyata Research)
他