Snow Lake XLR

| 注意事項

記述が古い箇所がございます。本記事は、2013年に書かれたレビューを転載したものです。時間がとれ次第、最新の情報を反映しようと考えておりますが、現時点では追いついていません。予め、ご了承ください。

| 音以外について

| 概要

　Snow Lakeは、オランダのSiltechが製造・販売していたインターコネクトケーブルである。Siltechといえば、上は500~万円/mのスーパーハイエンドも製造・販売している名門であるが、このSnow Lakeは100万円クラスに位置するケーブルである。尚、今回レビューするモデルはGeneration 5(G5)のモデル。

※100万円クラスとは、1m・XLR仕様の国内定価が100万円前後のケーブル群を指す造語。PRIME XLR（Jorma Design）、Indra（STEALTH）、Reference XL（TRANSPARENT）などをはじめ、蒼々たるケーブルがひしめき合う激戦区であるため、１つのジャンルとして区分している。

| 外見・取り回し

　このSNOW LAKE G5もSiltechの伝統に漏れず、特注のアルミ削り出しプラグ、同じくアルミ製の制震ボックス、（濃淡はあれど）青系で統一された導体、等々、まさにSiltechのRoyal Signatureシリーズ（旧Signatureシリーズ）の外見をしている。外見から高級感を演出するケーブルが多い中、なかなかにオーソドックスというか、落ち着いたデザインのケーブルと言えよう。

　そんなわけで、どちらかというと見た時よりも実際に触れた時・持った時に高級感を感じさせるケーブルで、アルミのずっしり感もあいまって、中身が詰まっている印象を受ける。取り回しは、100万円クラスの標準と比べると、可もなく不可もない印象。Gryphon（Stage III Concepts）ほど重くなく、Indra（STEALTH）ほど軽くない。だいたい、Seraphim（ZenSati）と同じくらいの扱いやすさ。

| 音についての感想

| 基本性能

　基本性能に関する率直な印象は、Indra（STEALTH）以上、Sakra（STEALTH）以下といったところ。上位機種のCompass Lakeが120万円/m程度の価格設定であったため、そちらとの差を意識している模様。この水準は、Snow Lakeの登場時には100万円クラスの中でもなかなかに優秀な水準だったと考えられる。しかしながら、2010年頃にはGryphon（Stage III Concepts）やSeraphim（ZenSati）といった、以前の100万円クラスでは考えられなかったレベルのケーブルが出現したことから、SiltechやTransparentのような老舗は、この価格帯では押されがちになったように思う。

　話が逸れたが、何と言ってもこのSnow Lakeにおいて圧倒的に優秀なのはその情報量とスピード＆リズム。詳しくは後述するが、銀ケーブルとしてのデメリットをほぼ封殺した上で、銀素材のメリット（スピード）を活かしてきている。

　また、聴感S/N・周波数レンジの広さ・帯域バランスの３要素に関して悪くない。S/N感についてはアルミブロックの制震が効いているようだが、カーボンを多用した昨今の各社フラッグシップには劣る模様。周波数レンジの広さは、銀素材の特権の１つ。が、上位のCompass Lakeとの価格差を意識し、なまじローエンドを手加減して設計したのが玉に瑕。それでも、Indra V.10（STEALTH）などとしっかり張り合える。このSnow Lakeを聴いただけでも、現行旗艦のMaster Crown等はレンジについて恐ろしいレベルにあることが容易に推察できる。帯域バランスについても、周波数レンジとほぼ同様のことが言える。

　一方、情報のコントロール、音の分離については、やはり銀ケーブルの宿命とも言うべき弱さはある（情報ドバドバである）が、それでもIndra（STEALTH）にかなり大差を付けている点は評価に値する。

それぞれの評価項目の定義についてはこちらを参照。

| 主な特徴

特筆すべき寒色寄りの出音

　Snow Lakeの音色はかなりの寒色系。なんというか、真冬の晴れた日の青空のような印象のケーブルで、明るく開放感はあるが、温度感はIndra V.10よりもはっきりと低い（参考までに、Indraは初冬のダイアモンドダストを彷彿させるケーブル）。尚、銀ケーブルというと音色面でのギラつきやひりつきが引き合いに出されがちだが、SiltechのSignatureシリーズはそういった銀の副作用とはほぼ無縁。総じて、銀素材の良い部分を引き出しつつ、ネガを潰すことで汎用性を高めたケーブルという印象。

質の高い銀ケーブル

　SiltechのSignatureシリーズに一貫することは、銀素材の物理特性の良さを最大限に活用することが優先されている点。例えば、金素材と銀素材を中心に導体を組み立てたケーブルは、Enigmaシリーズ（Kharma）、Indra（STEALTH）、Canorus（Purist Audio Design）、Armonico（Fono Acoustica）など多々あるが、音色面の要素ではなく、信号伝達における歪み・ノイズの低減という物理特性の改善を目的に銀・金を配合しているメーカーは珍しく、Siltechはその１つという認識。詳しくは"Siltech Silver-Gold Alloy Technology"（YouTune）をご覧いただくのが手っ取り早い。なお、品格のある銀線という意味では、出音は別ベクトルながらFLOW（Argento Audio）を彷彿させる。

最高レベルのスピード＆リズム

　その卓越した技術力の恩恵として最も大きいものが、スピード感＆リズム感であろう。もちろん、オーディオ的な観点からすれば、伝達速度が高いからといって必ずしも良い音が出るわけではなく、そもそも論として最終的なスピード感の良し悪しの判断は好みの問題でもある、というのは一理あるが、正確なスピード＆リズムという点において、聴感上でもSnow Lakeはかなり優秀なケーブルであろう。速い音は速く、遅い音は遅く、正確に再生できる。逆に、たとえばCanorus（Purist Audio Design）にあるようなまったりしや感じや低音のふくよかさは出ないし、時にはそれが味気なさに繋がりもするのだろうが、どんな曲でももたつかない点と速い・遅いメリハリがきちんと出せている点は、ここでは優れた特性として評価する。

| 使い道

　予め申し上げておくと、どのインコネをどこに入れるのがベストな選択肢であるかは、一般論以上に具体的なシステム構成からお考えになるべきで、こちらでの説明はあくまでついでのものであることをご理解願いたい。以下、本文。

　個人的には、DAC・プリ間での使用を勧める。多くの方はどうしても、出口に近いポジションに音楽性を求めるだろうし、上流に入れた方が物理特性の優位を感じやすい（縁の下の力持ち、といったような）。無論、このSiltechの音色が好みの方は下流に入れても全く問題ないと思うが、国内市場の動向からしてもおそらくNORDOST（除ODIN）やSTEALTHのような個性派を志向される方が多いように思ったので、このように述べた。

| 主な比較対象

Indra（STEALTH ）
Sakra（STEALTH）
Armonico（Fono Acoustica）
A.S.P. Reference GRYPHON（Stage III Concepts）
Canorus 20th Aniv.（Purist Audio Design）
他

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