PRIME XLR

　JORMA PRIME XLR（以下「PRIME XLR」）は、スウェーデンのJorma Designが製造・販売するインターコネクトケーブルであり、同社のフラッグシップである。Stealth Indraなどと同様に100万円クラスの価格帯に属するケーブルであるが、同価格帯でも屈指の実力を誇る傑作であり、別格と評する声もある。

　基本性能とは別に、“自然な音のケーブル”として高い評価を誇っているのも事実で、かつては、数あるケーブルの中でもこのPRIMEこそNo.1とするオーディオファイルもいたほどである。

　初めてこのPRIME XLRを手にとった時は、その華奢な線体に驚かされた。PRIME XLRと言えば、Stealth IndraやNordost Valhallaをも凌ぐとすら評されるケーブルであり、ボディもそれなりの重厚感を備えたものではないかと予想していた。しかし、実物は華奢でしなやか、さらにゴールドの被覆が煌びやかで美しいというまさに“美形”のケーブルであり、内心では密かに拍子抜けしたものである(無論、この無礼な感想は、音出しを行なった途端、吹き飛ばされたわけだが、※)。

　そんなわけもあり、十分な長ささえ確保できれば、接続には全くと言ってよいほど苦労しない。強いて言うならば、線体中央付近に位置するボックスが木製であり、傷や凹みなどを付けないよう気を遣う、といった程度なのではなかろうか。取り回しについては高評価。

※余談だが、弟分のORIGOは被覆が銀色になっている。この被覆のカラーリングが音色面のテイストにも反映されているあたり、面白い。

それぞれの評価項目の定義についてはこちらを参照。

• 高い基本性能

すでに「基本性能」の欄で説明済みなので、ここでは強調するに留める。

• 艶やかでリッチな音像表現

　音像表現の音場表現のバランスが取れていて、音色も暖寒の観点からみて中庸。弟分のORIGO XLRと比べると、音場表現はわりと似通っているが、音色についてはPRIME XLRの方が若干ながら暖色寄り。これは、PRIMEにのみ搭載されたクァンタムピューリファイアーの影響だと思われ、音の艶が出てリッチで煌びやかなテイストが付与されている。また、聴感S/Nについては、クァンタムピューリファイアーの影響からか、下位のORIGOとの差が顕著。

　音場については、前後・上下・左右のバランスが良く、特に前後への音像の定位には優れる印象。無闇に像が前に張り出したり、逆に後方の壁付近で固まるということがなく、扱いやすいのではなかろうか。

　音像は、純銅線らしいソリッドさと聴感解像度の高さはあるが、ことさらに強烈な実体感を主張しない。前方に張り出すような音像の実体感（ないし存在感）が欲しいなら、Kubala•SosnaやPurist Audio Design(PAD)のケーブルを選ぶべきかもしれない。

　音色について補足をすると、PRIME XLRの艶っぽさはそれなりに癖の強いもので、良く言うなら美しく、悪く言うならいびつ。はっきり言って、同じように明るくリッチなテイストを演出するSeraphim（ZenSati）と比べると、不自然さは目立つ。この色による汎用性の低下は、コスパの良し悪しと並び、実用の次元でPRIMEではなくORIGOを選択するユーザーが多い理由でもあるだろう。

　基本性能・信頼性共に非常に優れたケーブルであるため、ポジションを選ぶ印象はない。ペアとなるラインケーブルとの相性や、個性の強弱によって使い分けたら良いのではないだろうか。PRIME XLRの完成度は高いので、ペアの能力や個性を優先的に考慮してセッティングするのが良いと思う。

• OPUS MM（TRANSPARENT）

• Reference XL（TRANSPARENT）

• Seraphim（ZenSati）

• ORIGO（Jorma Design）

• Sakra（Stealth）

• A.S.P. Reference GRYPHON（Stage III Concepts）

• 他