記述が古い箇所がございます。本記事は、2014年に書かれたレビューを転載したものです。時間がとれ次第、最新の情報を反映しようと考えておりますが、現時点では追いついていません。予め、ご了承ください。
Armonico XLRは、スペインのFono Acusticaが製造・販売するインターコネクトケーブル。欧州などでは高い人気を誇っているようで、ArgentoやZenSatiなどと並ぶ新進気鋭のメーカーと言えよう。Armonico XLRに限って言えば、素材の構成や価格設定(100万円クラスに分類可、※)から、Indra V.10(STEALTH)などとライバル関係にあると言える。
※100万円クラスとは、1m・XLR仕様の国内定価が100万円前後のケーブル群を指す造語。PRIME XLR(Jorma Design)、Indra(STEALTH)、Reference XL(TRANSPARENT)などをはじめ、蒼々たるケーブルがひしめき合う激戦区であるため、1つのジャンルとして区分している。
ケーブル中央部の木箱が特徴的なケーブル。TRANSPARENTやMITにはじまり、箱付きはケーブル界でもトレンドとなっているが、その中にあっても更にユニークなデザインの箱だと言える。この箱の中に何かが入っているという話は聞かないし、インシュレーター以上の価値があるのかは現時点では不明だが、スペイン人の感性というか遊び心のようなものを感じさせるのは確か。日本のメーカーにも見習ってもらいたいポイントだ。
導体がソリッド・コアということで、国内でいうAcoustic Reviveかそれ以上の硬さを覚悟していたが、予想外に軽く、取り回しも容易なケーブルであった。箱も含めて軽いため、NORDOST VALHALLA並の扱いやすさである。プラグがOyaide製であり、堅牢であるのも安心できる点。総じて、使い勝手は非常に良い。
上述したように、100万円クラスに分類可能なケーブルであり、特に音像表現を充実させるために必要な要素については、かなりハイレベルなケーブル。主として、音像の聴感解像感と帯域バランスに優れる。
まず各音像の聴感解像感だが、これは高音域において特に良い。聴感S/Nの差を除けば、GRYPHON(Stage III Concepts)ばりに緻密・明瞭。銀素材の良さが出ている印象。ただ、ステージを音で満たすという意味での情報の量感は、Indra V.10(Stealth)やORIGO(Jorma Design)などには劣る。
帯域バランスも良い。一聴すると低音域の強さが際立つが、一拍遅れて中~高音域の明瞭さと実体感に驚かされる。低・中・高と三様に強いため、アンバランスとは思わない。
逆に残念な点は、S/N(聴感)が今一歩である点。Seraphim XLR(ZenSati)のレビューなどでも述べたが、S/Nの悪さがプラスに働くことは基本的に無いため、純粋に改善を期待したい。
情報をコントロールする力は、個々の音像の実体感と音線の明瞭さを高める方向で発揮されているようだ。これは、BLACK LABEL II(NBS)やAluminata(JPS Labs)など、優れた音像型ケーブルに共通する特徴。逆に、音像のインパクトをコントロールしつつ音場のバランス・形状を整える、といった働きは弱いようだ。音の分離などまるで気にしないと言わんばかりに、音像が前に出てくる。
総じて、Armonicoのサウンドはハイバランス・高汎用性とは一線を画す。むしろ、確固とした個性をもち、それを実現・強化するための各要素を特化させているという印象が強い。何でも屋とは言いがたいし、賛否両論あるだろうが、特にジャズのシンバルと女性ヴォーカルの魅力には、抗いがたいものがある。
それぞれの評価項目の定義についてはこちらを参照。
音像表現重視で、出音は暖色にも寒色にも寄らないニュートラル。その音を一言で表せば「実在感の強い美音」。微寒色に分類できないこともなさそうだが、STEALTH Indra V.10よりも暖色寄りであることと、明暗の次元ではかなりの明であることから、全体としてはニュートラルに分類した。
シルバーやゴールドを多用したケーブルとしては珍しいほど音像志向が強いケーブル。高音域は比較的さらりとしているが、下にゆくに従って重さと厚みが増してくる。金も銀も、低音の実体感を強化する特性はさほどでもないと思われるため、この音はソリッド・コア導体の特性によるものかと推察する。サウンドステージを広げる方向のケーブルではない。奥行きなどはむしろ狭めることでガツンとした音像のインパクトを追求している。誤解を覚悟で言えば、アコリバのケーブルが思い切り高性能・美音になったものだとお考えいただくのが良いかもしれない。
特に中~高音域においては、シルバーのヌケとゴールドの暖かみが絶妙なコンビネーションをみせ、明るさ・艶感・粒立ちのいずれも見事。宝石に喩えるなら、ゴールデンダイアモンドのよう。何より、この美音的要素が上述の剛健な音像と融合することで「実体感の強い美音」が現出することこそが、このケーブルの価値を高めている。
これはTRANSPARENTにもNORDOSTにも、あるいはZenSatiにも認められない麻薬的な個性であり、「基本性能や原音忠実とは別に、Armonicoは1セット所有しておきたい」と思わされる所以である。
XLRケーブルならば、プリ・パワー間に接続するのが良いだろう。DAC・プリに入れるよりも、Armonicoのらしさ・魅力といったものがサウンドに反映されやすいためだ。
ただ、解像感と周波数レンジの広がり・バランスについては優れていると思うので、そういった部分を強化したい方は前段に入れてもよいだろう。
Indra V.10(Stealth)
Sakra(Stealth)
A.S.P. REFERENCE GRYPHON(Stage III Concepts)
BLACK LABEL II(NBS)
ORIGO(Jorma Design)
Aluminata XLR(JPS Labs)
他