Flow Master Reference Power

Flow Master Reference (フロー・マスター・リファレンス、通称FMR)は、デンマークのArgento Audio(アルジェント・オーディオ)が製造・販売している電源ケーブルであり、同社の元フラッグシップモデルである。今回は、「オーディオ目玉親父」の管理人をされているmessaさんよりお借りする機会を賜った。

本来、正確性の観点からレンタル品のレビューは書かないのだが、今回はmessaさんの御厚意によって長期間のリスニングが可能となったので、ここにファーストインプレッションを記そうと思う。messaさん、この度は本当にありがとうございました。

【追記】

　その後、筆者もFMRを自身で購入・所有いたしました。

　とにかく、白い。そして、美しい。多くを語る必要はないだろうが、たとえば、ZenSatiのケーブルなどとは別の方向性で美しさを極めたケーブルだと感じる。ちなみに筆者的には、ZenSatiで最も美しいケーブルはCherubだが、実際に見比べてみるとFMRもこれに劣らぬ美しさである。ただ、あらゆる意味で汚れに気を遣うのは事実。

　取り回しは、はっきり言って楽ではない。根元の部分まで徹底してシールドしているあたり、NBSの初代BLACK LABELなどを彷彿させる。個人的には、Stage III ConceptsのKRAKENより若干楽な程度。

それぞれの評価項目の定義についてはこちらを参照。

• 寒色or暖色？

　FMRは、寒色系の出音のケーブル。また、音場表現と音像表現のどちらかに偏らず、バランスが良い。パラジウム・銀ハイブリッドのKRAKEN（Stage III Concepts）や銅・銀ハイブリッドのCherub（ZenSati）と比べると、よりシルキーでクールなサウンド。高品位なシルバー特有の出音のなめらかさやきめ細かさが、明確な統一感をもって全帯域に及ぶ。有名どころを用いて喩えるなら、EsotericのMEXCEL電ケーを銀線にして、更に１ランク高性能にしたモデル、といった感じだろうか。と同時に、これは特筆すべきだが、銀線のイメージとしてよく語られるひりつきやギラつきとは全くの無縁の出音。銀線を研究し続け、ネガを潰しに潰し、長所のみを引き出すとこうなるのであろう、と納得させられるサウンド。なお、あくまで純銀線であるから、たとえば銅・金ハイブリッド線であるSeraphim（ZenSatu）のようなウォームな感覚や、PLMM2X（TRANSPARENT）にあるような上質なコッパー特有の陰影感を得るのは難しい。

• 音場表現と音像表現のバランス

　サウンドステージについては、音場表現と音像表現のどちらかに偏らず、バランスが良い。例えばKRAKENのような鬼の如き３D定位をするわけでもなく、逆にEPIPHANY（Electra Glide Audio）のような音像の張り出し方をするわけでもない。強いて言うなら奥行きよりも左右の広がりが豊かといったところか。印象としてはPLMM2X（TRANSPARENT）やDesign DEVICE 0（K. Racing Audio）に近い。

• アグレッシブな低音域

　FMRのアグレッシブな低音域は特筆すべき。低音域でも、特に低い帯域について質・量ともに驚くべき水準だ。CableFanではしばしば低音の「落ち方」に関して言及するが、深さは無論、これほどの落下速度で音を落とすケーブルは滅多にない。いささか強烈すぎるきらいはあるし、帯域バランスの観点からすれば賛否はあるだろうが、そのカリスマ性については認めなければならないだろう。

　オールラウンダーといって差し支えないだろう。前段に配置して優れた周波数特性と帯域バランスを活かす使い方と、パワーアンプに使用して低音域のアタック感を高める使い方がある。

• DEVICE 0（K. Racing Audio Design）

• A.S.P. KRAKEN（Stage III Concepts）

• Cherub（ZenSati）

• 7N-PC9500（ESOTERIC）

• 他