記述が古い箇所がございます。本記事は、2013年に書かれたレビューを転載したものです。時間がとれ次第、最新の情報を反映しようと考えておりますが、現時点では追いついていません。予め、ご了承ください。
Kimber Kable PK-10 Palladian(以下「PK-10 Pal」)は、アメリカ合衆国のKimber Kableが製造する電源ケーブルであり、PK-14 Palladianと並び、かつては電源ケーブル部門のフラッグシップモデルであった。日本国内でもユーザーの多いPK-10 Goldの中央部にフィルタを装着したもので、1本のケーブルにとしては異例のずっしり感が特徴である。
上でも述べたように、ケーブル中央部に装着された大きくて重いフィルタが特徴的。このバカでかい筒の内部にノイズ対策装置が設置され、S/Nを向上させているものと思われる。筆者が使用した初代のモデルは、この筒がえらく不細工なものであったが、モデルチェンジ後はよりスマートな形状になっているようだ。
取り回しは、この装置の存在がゆえに一般的な箱無しケーブルと比べると大変で、特にラック上段に配置された機器などに接続する際は、ケーブル長によっては機器のインレットへの負荷が心配になる。しかし、ラインそれ自体は取り回しやすく、曲げ・捻りは比較的容易である。
現行だった頃は、国内定価が非常に高い額(TRANSPARENT PLMM2Xとほぼ同額)に設定されており、コストパフォーマンスの悪さが際立ってしまっている感は否めなかった。
さて、詳しくは後述するが、このケーブルの最大の特徴は聴感S/Nの良さである。その他の性能は、はっきり言ってPK-10 Goldと大差ないと感じられたが、聴感上のS/Nに関しては下手なハイエンドケーブルを凌ぐ水準にあり、その恩恵なのか音の分離も悪くない。その恩恵だろうか、情報をコントロールするのは案外うまい。レスポンスのスピード感と低域の締まり具合については今一歩だと感じるが、全体のバランスはとれているため、ボロが出にくいのだろう。
現行の頃はClear Beyond(Cardas)やGold Electra 5^2(Wire World)などと並び、ミドルエンドの暖色系ケーブルとしてはそこそこ有名だった。国産のミドルエンドに見られがちな高音域のエッジの尖りとは、良くも悪くも無縁な音作りをする機種だと感じている。ややまったりとして緩やかな速度感が印象的で、細部描写のキレ味や鮮度の高さで勝負するタイプではなく、むしろ全体としての懐の深さや完成度の高さで勝負するケーブルだと感じる。
下位のPK-10 GOLDとの主な違いは、ケーブル中央部に位置するボックスの有無である。このボックスの有無によって国内定価が3倍も違うのだが、確かにボックス付きのPalladianとボックス無しのGOLDとのノイズ対策力の差は、一聴して認識できるレベルにある。コスパの問題はさておき、PK-10 Palのノイズ対策力は確かなようだ。
これは金メッキプラグ装着モデルに対する感想であるが、PK-10 Palの音作りはまとまりの良いものだと感じる。特定の周波数帯域が突出することは稀で、熱心なノイズ対策の甲斐もあってか、破綻は皆無である。必要以上のこだわりや凝ったところが少ないと言ってもよい。若干暖色寄りの音色だが、Purist Audio Designのケーブルなどに見られる色気の演出や、NBSケーブルなどに見られる体育会系の熱気は感じない。この脚色の無さ(言い換えるなら野心の小ささ)が、PK-10 Palの完成度の高さと無理のなさの所以であり、飽きがきにくく安らげる音楽鑑賞を可能としているように感じる。また、広範なジャンルに対応できる懐の深さも感じさせる。ただし、キレやスピード感、派手な演出といった要素については守備範囲内ではないだろうから、これらの要素は他のケーブルに期待すべきだろう。
S/Nが優れることから、その特性を活かせるポジションに使用すべきだろう。ネックになるのが周波数レンジの狭さと聴感解像度の悪さなので、特別な理由がなければデジタル系やプリには使用しない方がよいと思われる。総じて、壁やアンプに使うのが無難である。反対に、ノイズ対策装置として壁と電コン・タップの間に使用するというのはそれなりに上策だと感じる。
いずれにせよ、ハイエンドのケーブルでシステムを固められている方にとっては、わざわざ新たに導入すべきケーブルだとは思わない。逆に、国内定価でも数万円程度の入門クラスのケーブルを使用されている方にとっては、壁に使うことでシステム性能や静寂性をバランスよく高めてくれる、頼りがいのある存在になりうるだろう。
Clear Beyond(Cardas)
Gold Electra 5^2(WireWorld)
AC-12(PS Audio)
Magic GEM v2t(Aural Symphonics)
Emotion(Kubala•Sosna)