MAGIC GEM v2t

Magic Gem v2tは、アメリカのAural Symphonics社が販売していたフラッグシップ電源ケーブルである。Aural Symphonics社のケーブルは、青蛇や黒蛇などといった愛称で親しまれ、ファンも多いが、このMagic Gem v2tはそんなAural Symphonics社の歴代ケーブルの中でも一際太く、（色々な意味で）ホットなケーブルだと思われる。

極めて太いケーブルで、その直径はSTEALKTH DREAM V.10などよりも大きい。しかし、見た目の重厚感からは想像もできないほど軽いケーブルである。シールドはスポンジ状で、たとえばアレグロ電源ケーブルやKing Cobra CX（Shunyata Research）などと比べると密度が低い。そのため、取り回しに苦労することは少なく、外見以上に扱いやすいケーブルである。尚、複数のカラーヴァリエーションが存在するようである（無地のブラックのものと、赤のラインが入ったもの、他にも？）。

ミドルエンドの雄、と言ったところだろうか。ハイエンドと評するには、音作りの過程で、音像の迫力や実在感に頼りすぎている。ノイズ対策と（特に低域方面の）周波数レンジの広がりについては、ミドルエンドの中では良いものをもっている。ただし、中低音がブームーであり、逆に重低音の分解能はイマイチであるなど、粗が目立つ。現用の機種にもよるが、このケーブルを選ぶなら、性能というよりキャラクターで選んだ方がよいだろう。

• 厚みがある音像

　上でも述べたように、前に出てくる分厚い音像はMagic Gem v2t最大の特徴である。特に中低域～低域の分厚さはかなりのものがあり、音場の濃さに貢献している。また、押し出しが非常に強く、音像の圧力はかなりのものがある。ただ、音像自体の密度はそこまででもない。同様に音像型・暖色系であるアレグロ電源ケーブルと比べると顕著なのだが、アレグロが音像の密度・陰影感で勝負しているのに対し、Magic Gem v2tは厚みと押しの強さで勝負していると感じられる。

• 非常に暖色的な音色

　Magic Gem v2tの音は、厚いと同時にとても熱い。アレグロやEmotion（Kubala•Sosna）等、当サイトでも取り上げた音像表現重視の暖色系ハイエンドケーブルにも引けを取らない。同じ価格帯で、という話をするなら、国産の銅線には音色がクールなものが多い中で、貴重な存在と言えるのではないだろうか。

　明確なキャラクターを備えたケーブルであり、その方向性を見極めた上で購入・運用する必要があるケーブル。音像に厚み・実体感を付加したい方、システムの温度感を高めたい方にとっては、このケーブルは有力な選択肢になりうるだろう。

　尚、基本性能よりもそのキャラクターを前面に押し出したケーブルなので、上流ではなく下流に使用した方が投資効果を感じやすい。基本的にパワーアンプかプリアンプだが、パワーに使うのは心許ない、という方は、プリにお使いになってみてはいかがだろうか。当方が最も推奨するポジションでもある。

• Allegro電源ケーブル

• Elation!（Kubala•Sosna ）

• King Cobra CX（Shunyata Research）

• 7N-PC9500 MEXCEL（Esoteric）

• 他